プロジェクトメンバー日誌

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2023.9.1
メイキングオブDrアドバイス2~某芸能人の〇●の報道を聞いて感じることなど
メンバー日誌

医局スガイです。

さて、今回私がラジオで4日目にリクエストしたのが、あいみょんのメジャーデビュー曲「生きていたんだよな」。このDrアドバイス、出演する専門領域の話をした後、リクエスト曲が流れ、フリートークという展開になりますが、事前に医師からこんな話をしますので、というメモをもらっておいて、あとはスタジオでぶっつけ本番で、時間をカウントしながら一日分ずつ収録していきます。こういうやり方で、一人で長寿人気ラジオ番組を作り続けてきたベテランディレクターの加藤氏の仕事は職人芸!でも、さすがに加藤氏もフリートークの部分は、打ち合わせしながらその先生の趣味、人生観など聞き出し、じゃあこんな話にしましょうか?とテーマを決めて毎回苦労はされているようです。私はこの番組出演は2回目ですが、前回はトーク何で行きますかね、と加藤さんも苦労してた気がする。今回はかけたい曲に連動してトークをしようというコンセプトで、(実際のトークはアドリブも相当入りましたが)後半のトークも原稿作って送っていたので、ディレクターもやりやすかったかも…。で、私の中で音楽談義をするうえで絶対外せなかったのがこの曲です。

一昨年病院祭で、あいみょんの「君はロックをきかない」をやったのですが、実は私が最初にやりたがっていたのが、「生きていたんだよな」。恋愛ソングの騎手?あいみょんのメジャーデビューがこの曲だったというのが不思議な感すらありますが、アコギ弾きながらトークと歌が交互に入るこの曲、女子高生の飛び降り〇●のニュースを聞いて、あいみょんに巻き起こった複雑な思いを扱っています。〇●という最悪の決断をした彼女だけど、一生懸命生きていて、彼女なりにこういう決断をした、そのことだけはわかってあげようよ…。〇●擁護だとか叩かれかねないテーマですが、あいみょんは最悪の決断をした彼女を肯定もしないが否定もしない。こういうテーマを扱った曲の中では群を抜いて深い。この曲、アコギのバックで演奏されている隠し味的なピアノがとてもかっこよくて気に入っていて、最初はピアノがかっこいいという理由でセレクトしていたのですが、病院祭でやるには重すぎないか、と賛否両論だった。でも、せっかく精神科医が複数入るプロジェクトなので、一回メッセージ性の強い曲をやってみたいという気持ちが強くなってきて、演奏する前に私が喋るMCまで実は作っていました。最終的にこの曲は重鎮のソリッドなロックドラマーし●や氏(伏字にすると怪しい人みたいですが、別に彼は怪しくないです。笑)の「この曲タイム感が独特で、仕上げるため相当練習しないとまとまらないよね」という大人の判断で没になった。まあ、没としたことには私も異存はなかったのですが、今回のラジオで、この曲が病院祭で没となった話は絶対取り上げたかった…。

ただ、朝のラジオでこの曲の歌いだしの歌詞は刺激が強いと思われること、歌詞で肝である「精一杯生きなさいなんてきれいごとだな、精いっぱい勇気を振り絞って彼女は空を…」という部分は絶対流したかったことから、事前にディレクターにオープニングのピアノの後、一分半くらいからフェードインするエディットバージョンを作ってほしいとお願いしておいた。スタジオ入りしたら、すでにエディットバージョンが出来上がっていて、最初にその出来を確認してから収録がスタートしました。

最近某タレントの自殺のニュースが報道され、一人で悩まず人につながること、早く専門医を受診することの重要性が繰り返し報道されています。こういうメッセージを伝え続けることはもちろん重要なのですが…。じゃあ彼(彼女?)が自殺前に決心して私の外来を受診していたとして、私がこれは入院させないとだめだなとまで緊急性を感じることができたかというと一回の診察ではなかなか難しい。ジェンダーの問題で悩んでいたらしい彼(?)が「バン記者」の沖縄の基地問題のレポーターをやっていたのを見たことがあって、その時彼は「基地問題って地元ではそれで生活できている人もいて、反対一枚岩でもない、だから難しいですよね」としっかり意見を言っていた。それを見て、「あ、彼っておバカキャラかと思っていたけど、業界で残る人って社会的能力は高くてやはりこいつを使いたいなと思える人なんだよな」と感じました。彼が私の外来を単独で受診しても、彼は初対面の診察医に優等生的に振舞うことができて、妻(元妻?ぺこ?)が一緒であればともかく、診察医も一回の面接で危険度を評価できるのには限界がある。なので「早く専門医受診を!」というメッセージを聞くたび、こういうメッセージの重要性はわかるのですが、ちょっと違和感も感じてしまうわけです。ではどうすればいいのか?〇●企図の前歴がある患者さんがいると、ご家族もついつい腫れ物に触る気分でなかなか言いたいことを言えなくなってしまうし、実は我々医療従事者も腫れ物に触る感覚になって患者さんにストレートに聞けなくなっている?なので、こういう報道があった際など、「〇●したい気持ちになってしまうこと」をタブーにせず話題にしてみる。患者さんが〇●を考えていた当時のことを客観視できるようになってきているのか、こういう話題はまだまだしんどいのか、周囲や、かかわる医療従事者が知るというのは重要なのかも。ということで、病院祭用に作っていた〇●したい気持ちを経験したことのある皆へのミッションのセリフとともにこの曲を流させてもらいました。

収録後加藤氏に、この曲YBCラジオ的に本当OKでした?と聞いてみたら、「上のほうでもどうなんだという声は絶対あると思うけど、先生のような立場の人がこういう話をするのは意味があると思うので、全然いいです」と言っていただきました。職人ディレクター加藤氏芯があって深い人でした。また仕事してみたいですね…。

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